彼らの通算7枚目となるニューアルバム『I Used To Go To This Bar』が素晴らしい。レーベル、エピタフ・レコードのボスにして、バッド・レリジョンのギタリストでソングライターのブレット・ガーヴィッツが全面的にプロデュース。無駄を削ぎ落としたサウンド、等身大ながらも文学性が高いリリック、そして何よりも素晴らしいソングライティングで、バンドはキャリア20年を超えた今も、進化を続けている。
ジョイス・マナーは、2010年前後に、エモ・リバイバルと言われた流れで注目を集めたバンドだが、エモというよりも、ポップパンクとインディーロックの間にあるようなサウンドで、いわゆるパンクの枠には収まりきらないようなイメージがあった。
『I Used To Go To This Bar』は、これまでのバンドの魅力、ポテンシャルが最大限に引き出された出来で、ブレットならではのシンプルながらもパワフルなプロダクションによって、バンドの持ち味とカリフォルニアの伝統的なパンクの音は最高の相性を見せている。
ドラマーに正式メンバーがいない彼らだが、レコーディングには、オアシスの再結成ツアーに参加したジョーイ・ワロンカーやソーシャル・ディストーションのデヴィッド・イダルゴ・ジュニアが参加。ソリッドなリズム隊も本作の聴きどころとなっている。
バリー・ジョンソン(ヴォーカル、ギター)、チェイス・ノッビー(ギター)、マット・エバート(ベース)の三人に話を聞いた。
Photography: Dan Monick
写真:左から、バリー・ジョンソン(ヴォーカル、ギター)、チェイス・ノッビー(ギター)、マット・エバート(ベース)
ブレット・ガーヴィッツのプロデュース
SiiiCK 『I Used To Go To This Bar』はこれまでの最高傑作だと思いますが、自分たちとしては手応えはどうですか?
マット 正直、最高だと思うね。何しろ2年くらいかけて作ってきたものを、先週遂にリリースできたんだから。
バリー ここ最近の中でも一番良いものが出来た感じがするし、一番フォーカスできたし、かなりまとまったものが出来たと思う。アルバムの曲に関しては、少しずつ録っていって。「I Used To Go To This Bar」を録ったすぐ後に、「All My Friends Are So Depressed」を録ったんだ。この2曲は同じセッションでまとめて録ったもので、「うわ、これ、2曲入りの7インチにできたら最高だな」って思ったんだよね。でも、それを一旦寝かせて、そのまま制作を続けていった。その時点で一つ基準を作って、そこに並ぶくらい良い曲か、あるいは別の意味での良い曲を書こうって決めたんだ。そこから、「これはちゃんとした作品だ」って思えるだけの素材が、充分に集まるまで制作を続けた感じかな。
SiiiCK なるほどね。
バリー だってさ、パンクバンドでアルバム7枚って多いじゃん。でも、今回は本当に、何か特別なものが出来たっていう自信があったんだよ。それで、実際にポジティヴな反応をもらえてるのが、スゴくクールでさ。
SiiiCK 7枚目のアルバムで、今なお進化し続けているから、スゴいことですよ。
バリー しかも、ちゃんとみんながついてきてくれる形で進化できてるのも、スゴくいいなって思うんだよね。今でもちゃんと興味を持ってもらえて、好きでいてくれて、しかも楽しんでもらえてるんだから。それに、めちゃくちゃ聴きづらい音楽を作ってるわけでもないし。好みに合わないとか、聴くのがしんどい音楽になったわけでもないしさ。あまりにも挑戦的すぎる方向に進化しちゃったってわけでもないからね。
SiiiCK 今回は、ブレット・ガーヴィッツがプロデュースを担当していますが、ブレットとはどういう流れで一緒に仕事することになったのですか? 前から話していたのですか? それとも、タイミングが合った感じですか?
バリー いや、ブレットの方から連絡してきたんだよ。僕に連絡してきて、「前のアルバムのプロデュース、俺に頼んでくれなかったの、ちょっと傷ついたんだけど」って言ってきたんだ。
SiiiCK そうなんですか?
バリー その前にも、「何で俺にプロデュース頼まなかったんだよ」みたいなことを言われてさ。正直、それちょっと変だなって思ったんだよね。だって彼って、そんなにたくさんのレコードを積極的にプロデュースするタイプじゃないからさ。もちろんランシドとかバッド・レリジョンのアルバムはやってるんだけど。
SiiiCK そうですね。
バリー それで僕は、「あなたがやりたいと思ってたなんて知らなかったよ。でもさ、僕たちは一緒にレコーディングできたらうれしいけど」って言ったんだ。それで、何曲か書けた段階でさ、彼が「スタジオ入ろう」って言ってくれて。しかも、「タダで録るよ。金は要らない。もし気に入らなかったら、使わなくていい」って言ってきたんだよ。
SiiiCK それもスゴいですね。
バリー それってさ、めちゃくちゃ謙虚だし、スゴくいい人じゃない? でも同時に、彼自身も、僕たちが絶対に気に入るってわかってたんだと思う。だって、一緒にスタジオ入った瞬間から、相性がめちゃくちゃ良いのがはっきりわかったから。彼のプロダクションのやり方と、僕たちの曲、僕たち自身の人間性まで含めて、全部がスゴくハマってたんだよね。彼は、ジョイス・マナーの曲を最高の形に仕上げる方法を本当によくわかってるんだ。何ていうかさ、ドラッグの売人が最初にちょっとだけタダでくれる感じに似てるんだよ。「最初の一回はサービスな」って言って。そしたら、また欲しくなるじゃん(笑)。
SiiiCK その表現もヤバいですね(笑)。
バリー で、案の定、僕たちも「じゃあ、もっとやろう。アルバム全部一緒にやろう」ってなってさ。気がついたら、彼がアルバム全体をプロデュースしてたんだ。それでも彼は、「タダでやるよ」って言ってくれたんだよね。
マット 最初にちょっと試せたのが良かったんだよね。気軽に足を突っ込む感じで、しがらみなしでさ。プレッシャーなしで、合うかどうかを試せたのが良かった。だって、プロデューサーとアルバム丸ごと契約するのって、正直ちょっと怖いじゃん。
バリー 相性が悪かったら、最悪だしね。
マット 微妙でも、めちゃくちゃ金がかかるしさ。
バリー そうそう、合わなかったら最悪だけど、今回はローリスク、ハイリターンになったんだ。
SiiiCK 三人はブレットがプロデュースしてきたバッド・レリジョンとかランシドは、昔から聴いて育った感じですか?
チェイス もちろん。めっちゃ聴いてた。
バリー めちゃくちゃ聴いてたよ。バッド・レリジョンもランシドも大好きだ。特にランシドは、メンバー全員が共通して好きなバンドって感じでさ。ツアー中のバンの中でも、爆音でランシドを流してるくらいだ。
マット ブレットのプロダクションもそうだし、エピタフ・レコードの存在そのものが、LAで育った俺たちにはめちゃくちゃデカかったんだよ。

アルバム『I Used To Go To This Bar』の制作
SiiiCK じゃあ、ブレットと一緒にやるって、うれしいけれど、ちょっと不思議な感じもありましたよね。
バリー ブレットってさ、普段の立ち振る舞いもずっと変わらなくて、僕たちにとってはずっとレーベルの人って感じなんだよね。一緒にいて楽だし、偉そうにしたり、大物感を出したりもしない。でもさ、あの人ってめちゃくちゃいろんな顔を持ってるんだよね。バッド・レリジョンのギタリストで、ソングライターで、しかもエピタフの人でもあって、いろいろやっててさ。ランシドをプロデュースしたことも知ってはいたんだけど、正直あまり意識してなかったんだよね。でも、コーラスを録ってる時にさ、「うわ、これランシドっぽい音してる!」ってなって。「そう言えばさ、ランシドのプロデューサーじゃん!」って(笑)。マジでクソカッコいいんだ。普段があまりにも普通すぎて、スゴさを忘れちゃうというかさ。
SiiiCK やっぱりブレットって、サウンドに彼らしさがありますよね。シンプルでソリッドだけど、ちゃんとデカい音で。今回もそれを感じました。
バリー そうそう。まさにそれ。実際、彼と一緒に録り始めた瞬間から、「これは良いぞ」って、すぐにわかったぐらいだから。
SiiiCK ブレットは優しいメンター・タイプでした? それとも厳格な指導者タイプでした?
バリー とにかく、スゴく励ましてくれる人なんだよね。彼のやり方は、威圧したり、怖がらせたり、プレッシャーをかけたりして、結果を出すタイプじゃなくて。基本的に、愛とサポートのスタンスなんだよね。めちゃくちゃ褒めてくれるんだよ。「君たちのバンド、マジで最高だ」とか、「君の声も最高だ」、「ベースも最高だ」みたいな感じで。「だから、みんな君たちのことが好きなんだよ。君たちは本当にスゴいんだ」って言ってくれる。そういう気持ちでレコーディングすると、「自分がやってることって意味があるんだな」って思えてくるんだよね。それってスゴく大事なことで。アーティストって、自信を持てば持つほど、いいパフォーマンスが出るんだよね。彼はそれをわかってて、「録ってる最中にアーティストをいい気分にさせるのが自分の仕事だ」って理解してるんだ。レコーディングってスゴく無防備な行為だし、下手したらめちゃくちゃ恥をかくリスクもあるわけでさ。彼は、そういう自分で自分を邪魔しちゃう感じから引っ張り出してくれる。しかも、それをめちゃくちゃ自然にやるんだよね。本当に心から、作品やバンドを良いものだと思わせてくれるんだ。
SiiiCK それにブレットはギタリストでもあるし、ギターの音もいつも良いですよね。
チェイス 実際にやってみて最高だったよ。バリーが言った通りの理由でさ。あと、単純にめちゃくちゃ面白い人なんだよね。アルバム作りが楽しかった大きな理由の一つは、そこにもあると思う。ずっと冗談を言ってて、みんなで笑いっぱなしみたいな感じでさ。ギターの音作りに関しては、センスがとにかくスゴいんだよ。「ここ、こんな感じで弾いてみて」って言うだけなんだけど、そこから一発でめちゃくちゃいいトーンを作るんだよね。たまにギターパートを提案してくることもあって、最初は「まあいいね」って感じだけど、結果的にはスゴくハマる。全員に対していいパフォーマンスを引き出すようにしてくれるんだ。特にメロディのある楽器に関しては、それがスゴく重要でさ。しかも彼は、スピーカーから再生された時点で、気持ちいい音になることをスゴく重視してるんだよね。
バリー かなりオールドスクールなやり方だけどね、みんなからちゃんと良いテイクを引き出してくれる。それに、今回は世界トップクラスのドラマーを使ったから、ドラムは最高のテイクが録れたし。その上でさ、マットはベースがめちゃくちゃ上手いから、ああいうスゴいドラマーたちと合わせるのも特に苦労しなかったんだ。僕とチェイスに関しては、ちょっと時間がかかったかな。でも彼はさ、「君ならできる」って本気で信じてくれるから。そうすると、こっちも「できるかも」って思えてくるし。彼は本当にいいコーチだよ。
マット 彼は言語化するのが上手いんだよね。何を求めているのかを、めちゃくちゃ的確に説明してくれる。あとはそれを実際にちゃんと演奏するのが、こっちの役目って感じだった。
チェス たぶんだけど、チェスで40手先まで読むみたいなことを、頭の中でやってるんだと思うんだ。今この言い方をしたら相手を傷つけずに済むとかわかってて、それで20分後くらいには、ちゃんと欲しい結果を引き出してるみたいな。
SiiiCK ブレットから「この曲はもっと速くした方がいい」っていう提案もあったんですよね。
バリー 僕が持ってきてた曲の多くが、割とメロウで、インディーロック寄りな、アルバムの中でもソフトな曲ばかりだったんだ。そういうのが5~6曲あって、いわゆるパンクっぽい速い曲は1曲あるかないかみたいな感じで。まあ、それは単純にその時の僕のモードというか、聴いてた音楽の影響も反映されてたんだよね。でも、僕自身はそれで全然いいと思っていて。「今回はちょっとメロウ寄りのアルバムになるけど、それも面白いよな」って。7枚目のアルバムだし、ずっと同じことをやるわけにもいかないし。そしたらブレットが、ちょっと言いにくそうにだけど、「曲はどれもスゴくいいし、このアルバムも好きだけど、もうちょっとテンポが欲しい。エネルギーが必要だよ」って、言ってきたんだ。「良いジョイス・マナーのアルバムにするには、このタイプの曲はもう充分あるから、速い曲を何曲か足した方がいい」って言われて。
SiiiCK それを言われて、どう思いました?
バリー 正直、ムッとしたし、ちょっと傷ついたんだよね。何か、アルバムのビジョンに関して意見が食い違ってる気がしてさ。「速い曲って言うけど、俺たちの一番有名な曲って、「Constant Headache」じゃん? あれ全然速くないし」って思ったし。自分のアーティストとしてのモード的にも、速い曲を書きたい気分じゃなかったんだ。でもね、その言葉がずっと引っかかってて。考えれば考えるほど、たぶん彼の言うことは正しいんだろうなって思い始めたんだ。メロウなインディーロック寄りの曲だけじゃなくて、そこにエネルギーの高い曲とか、強度のある曲が入った方が、アルバムとしてはもっと引き締まるなって。そこからは、新しく曲を書くたびに、「これ、もっと勢い出せないかな?」って考えるようになった。で、結果的に、アルバムの一部はエネルギッシュなパートにできたんだよね。
SiiiCK 確かに、スゴくエネルギーに満ちていますよね。ジョイス・マナーの2018年の『Cody』、2022年の『40 Oz. to Fresno』を聴くと、いわゆるパンクのステレオタイプには寄せていない感じがするんですよね。パンクはパンクだけど、型にハメたくないというか。
バリー まさにその通りだよ。『Never Hungover Again』(2014年)の時は、ちょっと変でインディー寄りなポップパンクをやったと思っていて。ドリームポップとかシューゲイザーっぽい要素も取り入れつつ、そこに完全に振り切るわけでもなくてさ。ポップパンクでありつつ、インディーロックでもある、みたいな。そういう微妙なバランスをずっと探ってる感じはあるね。結局、ずっとやってるのは、ポップパンクの枠の中で、どれだけ変なことができるかなんだと思う。
SiiiCK 今回のアルバムにも、シンセの音も入っているし、カウパンクとかロカビリーのフレイバーもありますよね。パワフルな楽曲もありつつも、いろいろな要素が入っているというか。
バリー うん、いろいろ試してるよ。でも、結局、ブレットの言ってたことは正しかったなって思ってる。メロウな瞬間と、エネルギーの高い瞬間が両方ある方が、アルバムとしては絶対に面白くなる。だから、あの話をしてくれたことにはスゴく感謝してる。プロデューサーとして、アーティストに対して、「自分はこの作品をこう見てる」って、言いにくいことをちゃんと言ってくれたわけで。それが結果的にアルバムを良くしたんだと思う。
SiiiCK 『Well, Whatever It Was』のMVにはブレットも出演していますが、あのMVは最高ですね。
バリー 監督のランス・バングスが、『ブリティッシュ ベイクオフ』(イギリスの料理コンテスト番組)のパロディみたいなのをやりたいって言ってきてさ。それを聞いて、「じゃあ、ポール・ハリウッド役はブレットしかいないでしょ」ってなって。本人もノリノリで出てくれてさ。あれはけっこう熱かったね。
SiiiCK しかも、戦う相手がみんな’80年代のイギリスのミュージシャンという設定でしたよね。
バリー モリッシーはメキシカンだけどね(笑)。
Joyce Manor - Well, Whatever It Was
SiiiCK ちなみに、「All My Friends Are So Depressed」の歌い方は、モリッシーを彷彿とさせますね。
バリー めっちゃモリッシーは好きなんだよね。ザ・スミスもモリッシーも大ファンなんだ。だから2ndアルバム以降、ほぼ毎回1曲はザ・スミスっぽい曲を入れてるんだ。
SiiiCK この曲のリリックに「Wore a dress, "Last Caress”」ってありますが、ミスフィッツの曲のことですよね。
バリー もちろん。ミスフィッツっぽさも入れてるし、ミスフィッツが嫌いな人なんていないでしょ。
マット めちゃくちゃ好きだよ。
Joyce Manor - All My Friends Are So Depressed
LAのパンクという意識
SiiiCK ところで、出身はLAのトーランスですよね。日本人も多いし、日本食レストランも多いでよね。
チェイス 実は僕、日本とのハーフなんだよ。
SiiiCK そうなんですね。トーランスのあるサウスベイ・エリアって、ビーチ・ボーイズ、ブラック・フラッグ、サークル・ジャークス、ペニーワイズといったバンドの地元でもありますよね。
マット 僕には姉ちゃんがいてさ、ディセンデンツとかブラック・フラッグとかを教えてもらったんだよね。親からはビーチ・ボーイズを聴かせてもらった。でも『ペット・サウンズ』をちゃんと聴いたのは、もっと後で、22~23歳の時にバリーに教えてもらってからだった。やっぱり南カリフォルニアの影響ってデカくて。僕たちがエピタフに12年も所属できてるのも最高だし、その前はAsian Man Recordsにいて、カリフォルニアのスカのシーンからの影響も、自分たちにとっては大きかった。レーベルに関しては本当に恵まれてたと思う。
バリー ディセンデンツは全員にとってデカい影響だよね。僕たちのやってることって、「Silly Girl」みたいな曲とそこまで変わらないと思うし。ああいうポップパンクの世界観を作ったのは彼らだと思うよ。同じ場所の出身っていうのも偶然じゃない気がする。土地の感覚みたいなものが、ああいう音楽に向いてるんじゃないかな。
マット あと、ブリンク182もね。彼らも車で2時間くらいの距離だし。いかにもカリフォルニアって感じだよね。
バリー ビーチ・ボーイズ → ディセンデンツ → ジョイス・マナーっていうのが流れでしょ(笑)。これはカルネアサダ・ブリトーのせいかも。
チェイス 僕もブリンク182がめちゃくちゃデカかったし、Minutemenにもハマってた。当時のハーモサ・ビーチ周辺って、もっとアグレッシヴで、ちょっと暴力的なパンクも多くてさ。Minutemenとか、サンペドロ周辺のバンド、Toys That Killとかをよく観に行ってたんだよね。あの辺のバンドを観て、パンクのライヴってこんなにも楽しくて、もっとライトな感じでもいいんだって、価値観がぶっ壊れたんだよね。
バリー F.Y.PのトッドがやってたバンドがToys That Killで、僕たちはよく観に行ってたんだよね。あの人たちはスゴく影響力があってさ。ただ単にカッコいいだけじゃなくて、身近で話しかけやすい存在でもあったんだ。ちょっと年上で、いわば兄貴分みたいな感じで、普通に一緒に遊べる存在なんだけど、ちゃんとツアーを回ってるバンドでもあってさ。個人的には、どうやってクールでいるかとか、他のバンドへの接し方とかを、あの人たちから学んだ感じがする。ツアーで来たバンドのために自分たちでショーを組んだりして、スゴくDIYの精神に根ざしてたし、シーン作りにも関わってた。カルチャーにちゃんと入り込んでる感じでさ。それに、単純に一緒にいて楽しい人たちだったんだよね。ノリも良くて。スゴくリアルでさ。自然体で、ユーモアもあって、カッコいいんだよ。
SiiiCK ジョイス・マナーは2008年結成ですよね。あの頃って、いわゆるエモ・リバイバルみたいなとらえ方もされていた時期だと思いますが、そういう流れの中で、音楽的にはどんな方向でやろうと思っていたのですか?
バリー みんな多少はエモも聴いてたけど、僕自身はエモ・リバイバルをやろうって意識は全然なかったな。ただ、出てきた時期がそういうタイミングだったから、たまたま同じ文脈で見られただけで。マットが一番エモを聴いてたと思うけど。みんなThe Promise Ringとかは好きだったね。
マット でも、2008年当時は、まだそういう文脈の話自体がそこまで盛り上がってなかったと思うね。正直、ポップパンクは全然流行ってない時代だったし。
バリー チェイスと僕は、たぶんエモ度は低めだよ。
マット 本当に最初は、自分らの身内の25人くらいが観に来るハウスショーをやってるだけだった。それが何年かかけて、Tumblrとかのおかげで一気に広がっていった感じかな。昔のエモのレコードとか、若いエモ・バンドのデモとかを紹介するネットのブログがたくさんあってさ。そこからかなり自然発生的に広がっていったと思う。正直、タイミングが良かったっていうのも大きいね。
バリー 昔カリフォルニアでライヴしてた頃は、客が2人とかの日もあってさ。でも、その2人が37歳くらいのおっさんで、僕たちは23歳とかでさ。「おまえらいいね、JawbreakerとかSamiamみたいだ」とか言われたりして。’90年代を生きて、そういうバンドを実際に観てきた人たちなんだ。40代のポップパンク・バンドと一緒に対バンすることもあったし、当時はちょっと変な感じだったよ。最初の頃は、僕らのやってることに本当に共鳴してくれる若い人って、あまりいなかったから。それで、2012年くらいかな。たぶん僕らとか、Tigers Jaw、Title Fightみたいなバンドが、ちょっとずつ名前が知られ始めて。Algernon Cadwalladerとか、そういうバンドも少しずつ人気が出てきたけど、別に誰もめちゃくちゃ有名だったわけじゃないんだよね。まあ、ちょっとしたアンダーグラウンドの流れはあって、いわゆるエモ・リバイバルって呼ばれるヤツだけど。でも、僕らはキラキラしたギターはやらなかったし、どっちかというと、ポップパンクとインディーロックのミックスみたいな感じだと思う。
SiiiCK 今回のアルバムの背景とかインスピレーションについても、聞かせてください。ハイになったり、酔っ払ったりすると、昔を思い出すノスタルジーみたいなものが出てくると思うのですが、そういう感覚をスゴく上手く描いているなと思いました。
バリー ありがとう。まあ、僕らはカリフォルニアでずっと飲んだり、ハイになったりしてきたからね。長いことやってるからさ、2004年のこととかは思い出せるんだよ。ベロベロでハイになってた頃とかね。もう22年も前だよ。例えばさ、僕はThe Shinsを聴くと、あのアルバムを初めて聴いてた頃、初めてウィードを吸い始めた時のことを思い出すんだよ。完全にあの頃に引き戻される、そういう感覚がある。今回の影響で言うと、タイガー・アーミーとかもあるね。
チェイス 今回の作品に関しては、昔から聴いてきた音楽で、かなり深く自分たちの中に染みついてるものを、いろいろ参照してる感じかな。
バリー あ、ちょっとこれだけは言わせてほしい。最初にデモみたいな曲を書いて、ブレットと一緒に作業し始めた時は、もっとインディーロック寄りの曲が多かったんだよね。でも最初のセッションが上手くいってから、いろいろ考えすぎちゃってさ。「ブレット・ガーヴィッツがプロデュースするジョイス・マナーのアルバムって、どんなサウンドになるんだろう?」って。メランコリックで、ランシドっぽいクラシックな感じになるのかみたいな。それで、「ああ、これはブレット・ガーヴィッツの作品として考えよう」みたいな意識になって。そう考え始めてからは、完全に頭の中がそっちに寄っちゃって。聴く音楽も変わってきたんだよね。
チェイス それに、ちょうどNOFXの最後のライヴがサンペドロであって。あれはほぼブレットのお祝いみたいな感じで、どのバンドもみんなスピーチで、ブレットへのリスペクトを語ってたんだよね。これは全部、ブレットがいなかったら実現してなかったことだと思って。僕とバリーも客席にいたんだけど、たぶんその時点で、もう1~2回セッションはやってたと思うんだ。あれが完全に決定打になったというか。何か不思議な感じでさ。もう逃れられないみたいな感じさ。僕たちがブレット・ガーヴィッツの作品を作ってるっていう事実から逃げられないんだ。しかも、僕たちが育って聴いてきた音楽に、彼がどれだけ影響を与えてきたかってことも含めて考えると、とんでもないなと思って。だから、バリーが言うように、「ブレット・ガーヴィッツが手がけるジョイス・マナーの作品を作る」っていう意識はあったね。
バリー でさ、ブレットはThe GermsとかXが大好きなんだよ。完全にLAパンクの人なんだよね。だから「このアルバム、LAパンクっぽいね」って言われるのは、たぶんそこが理由だと思う。僕の中でも、「じゃあ、そういう方向で行こうか」みたいな感じになってたし。
マット 「俺たち今、ブレット・ワールドにいるんだよ、ベイビー!」って感じ。
バリー あのNOFXのラスト・ショーに行ったのも面白くて。「ブレット、来てたりしないかな」って思ってたらさ、次の瞬間、NOFXと一緒にステージに出てきて。バッド・レリジョンのカバーをやってさ。あれで初めて、自分たちのことを「LAのバンド」ってちゃんと意識したんだよね。
2024年10月6日。NOFXのラストショー。ブレットも参加してのバッド・レリジョン「We're Only Gonna Die」のカバー
アルバムで歌われる喪失感、リリックに描かれたフィクション
SiiiCK アルバムのタイトル曲「I Used To Go To This Bar」のリリックに出てくるバーですが、このバーって実在するのかな?と思ったと同時に、実在しないけど、LAによくあるバーのことなのかなとも思ったんです。「I Know Where Mark Chen Lives」のリリックでは、女性が大麻ショップで強盗に遭いますよね? あれもフィクションなのか、実話なのかわからなくて。何か、現実と夢の境がない感じがある詩の世界なんですよね。
バリー あれは全部フィクションだよ。実際に起きた出来事ってわけじゃない。でもね、フィクションなんだけど、めちゃくちゃ僕の実生活に近いんだよね。よく「知ってることを書け」って言うじゃん? そんな感じなんだ。例えば、「よく行ってたバー」っていうのも、昔住んでたアパートの近くにあった、いくつかのバーを混ぜた感じだし。大麻ショップの話は、襲われてる現場に居合わせたことはないんだけど、実際にああいうのはめちゃくちゃ起きてたんだよ。大麻ショップが出始めた頃なんて、銃を突きつけられて強盗に入られるのは、日常茶飯事だったから。
SiiiCK それは大麻が合法になってからの話ですか?
バリー 連邦法では違法だけど、州や自治体レベルでは合法だった時期だね。だから、ちょっと無法地帯みたいな感じで、変な時代だったんだよ。それにさ、プロモーションで、初めて来た客には無料でダブ(ハッシュオイル)を吸わせてくれたりして。あれ、めちゃくちゃ強烈で、ほぼサイケデリック体験みたいなものでさ。しかも店員も一緒にやるんだよ。だから店員も、あり得ないくらいハイになってるわけだ。そういう人生で一番ハイな状態の時に、いきなり強盗に遭うって想像したらさ、どれだけ最悪かって思って。それが頭に浮かんで、チェイスと二人で「最悪すぎるな」って笑っててさ。それで、そのまま曲のネタにしたんだよ。
Joyce Manor - I Used To Go To This Bar
SiiiCK アルバム全体からは、喪失感みたいなのをスゴく感じたのですが、そういうのもテーマになっていますよね?
バリー そうだね。やっぱり歳を重ねてくるとさ、特にパーティが好きで、ドラッグをやってる連中とつるんでるタイプだと、どうしても何人かは脱落するんだよね。で、僕自身はほんの少しだけど、サバイバーズ・ギルト(生き残った罪悪感)みたいなのを感じることがあって。だって僕もさ、めちゃくちゃ酒を飲むし、ドラッグもやるけど、それが完全に人生を乗っ取ったり、何かをやるのを妨げるところまではいかなかったんだよね。でもさ、人によっては、20代前半くらいで突然統合失調症の症状が出たりすることもあるし、それってもう運が悪かっただけみたいなところもあるじゃん。あと、アルコール依存がひどくなって、人生が壊れちゃったり、最悪、アルコールで亡くなっちゃう人もいるしさ。だからこのアルバムって、長いことその場に居続けて、ずっとパーティしてきて、その中で生き残れなかった人たちを見てきた、みたいな感覚の作品なんだと思う。それでちょっとだけ、全体に陰りというか、物悲しさみたいなのはあると思う。
SiiiCK なるほどね。
バリー とは言え、楽しいアルバムだとも思ってるよ。別に、いかにもな号泣モノを作ったわけじゃないしさ。
SiiiCK もうすぐツアーに出るし、コーチェラにも出るんですよね?
チェイス 僕はプラネット・フィットネスの会員なんだよね。だから、ツアーで通る街ごとにプラネット・フィットネスのジムに行くつもりだ。で、新曲をライヴでやるのがマジで楽しみなんだよね。かなり練習してきたし、だんだん形になってきてるから。実際やってみると、ライヴでやるのがめちゃくちゃ難しい曲ばっかなんだけどさ。でもまあ、毎晩演奏できるのが楽しみだよ。
マット 僕たち、ここ数年、ヘッドライナー・ツアーをやってなかったからさ。今回は今までで一番大きいツアーになるんだよ。めちゃくちゃ楽しみだ。
バリー 評判のいいアルバムを引っ提げて、過去最大のヘッドライナー・ツアーができるのって、やっぱりうれしいよね。今回のアルバムはみんなが気に入ってくれてるっていう空気があってさ。やっぱり自分たちのやったことに共感してくれて、ちゃんと反応が返ってくるのはうれしいよ。めちゃくちゃ楽しみにしてる。
SiiiCK 日本に来る予定はあります? 2013年に来日しましたよね。
バリー 誰に連絡すればいいんだ? どうやったら行けるんだ? 行こうぜ。誰か実現させてくれよ。日本に戻りたいんだよ(笑)。
マット 助けて! 助けて!
バリー みんなに伝えてくれ。「ジョイス・マナーは日本に戻りたがってるのに、宇宙は全然声かけてくれないんだよ」って。Cosmic Note Recordにシャウトアウト。最初に僕たちを呼んでくれたのは宇宙なんだ。宇宙はめっちゃ面白いし、大好きだよ。日本にはまた行きたいから、日本のみんなによろしく伝えてほしい。
Outbreak Fest 2024でのジョイス・マナーのライヴ
『I Used To Go To This Bar』
(Epitaph Records)
2026年1月30日リリース

Track List:
1. I Know Where Mark Chen Lives
2. Falling Into It
3. All My Friends Are So Depressed
4. Well, Whatever It Was
5. I Used To Go To This Bar
6. After All You Put Me Through
7. The Opossum
8. Well, Don’t It Seem Like You’ve Been Here Before?
9. Grey Guitar
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SiiiCK Official
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