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星熊南巫『PREDICTION』- 新たなスタートを刻む記念すべき一夜。

2/19、Spotify O-WESTで行われた『PREDICTION』。星熊南巫の新たなスタートを刻む記念すべき一夜を記録した公式ライブレポ。

2025年7月9日、Zepp Hanedaでのラストライブをもって我儘ラキアが解散してからおよそ7ヶ月。その中心人物だった星熊南巫が、ついにステージに帰ってきた。グループ解散後はソロアーティストとして楽曲をリリースしてきた彼女が、凄腕という言葉ではとても足りない猛者たちからなるバンドを従えて立った、2月19日、渋谷・Spotify O-WEST。星熊の新たなスタートを刻む記念すべき一夜は、再会の喜びと、尽きることのない表現への意志と、ここから始まる未来への期待が交差する、とてもエモーショナルなものとなった。

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さて、「猛者たち」と書いたが、この日星熊の楽曲を鳴らしたバンドのメンバーは以下のとおり。


YD(Gt/Crystal Lake)
Ivan(Gt/QON、ex Survive Said The Prophet)
Hiroki Ikegawa(Ba/ex Crossfaith)
Chihiro Hosokawa(Dr/ex KOTORI)

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ラウドロックシーンに爪痕を残し続けてきたギタリストとベーシスト、そして若手随一のスキルとパッションをもつプレイヤーとしてさまざまなアーティストから引っ張りだこのドラマー。ベースのHirokiに至っては、2024年にCrossfaithを脱退して以来、久々のカムバックである。このメンバーは、ライブをやっていくにあたって星熊からリクエストして実現したものだという。「我儘を言ったら、本当に叶ったんです。背負わなきゃいけないって怖さもきたけど、怖がってる暇はないなって」。やるからには、という気合もあっただろうし、それだけ彼女の中には鳴らしたい音、鳴らすべき音のはっきりとしたヴィジョンがあるということでもあるだろう。いずれにしても、バンドの鳴らす轟音の上で、星熊は力強く声を響かせ、キャリアの新章の幕開けを高らかに告げてみせたのだった。

ステージ後方には「HM」のイニシャルを染め抜いたバックドロップが掲げられ、その前に目を移せば、お立ち台とマイクスタンドが鎮座している。緑と青のライトがそれらを照らし出し、インダストリアルなBGMが鳴り響いている。何かが起きそうな予感がプンプンする会場に、まずはバンドメンバー、そして続いていよいよ星熊南巫が姿を現した。フードを目深に被ってお立ち台に上がった彼女が、リングに上がったボクサーのように手を高々と挙げる。そして始まった1曲目は、昨年12月に再始動を告げる1曲としてリリースされた「LUMEN」だった。轟く重低音のなか歌う星熊の声は心なしか緊張しているようにも思えたが、曲が進むに従ってその声には熱が宿り、力強さを増していく。歌い終えて「帰ってきたぞ!」。そう叫ぶと、フロアを埋め尽くしたオーディエンスからはけたたましい歓声が巻き起こる。ライブが始まる前から熱気に満ちていた会場は、それが合図かのように興奮のるつぼへと化していった。

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続く2曲目はBUNNYの楽曲に星熊がボーカルとして参加した「Kill My Voice」。孤独のなかで愛を求めるこの曲の歌詞が、今の星熊の心情をなぞるように響き渡る。フードを外した彼女はリズムに体を弾ませながら、ステージのいちばん前まで出て歌っている。その表情には笑みが浮かび、顔につけられたラインストーンが、照明の光を浴びてキラキラと輝いている。そして「O-WEST、もっともっと来てください!」とフロアに呼びかけると、赤いライトが点滅するなか、彼女が我儘ラキアと並行して展開してきたソロプロジェクト、DEATHNYANNの楽曲「tarantula」へと突入。ジェットコースターのようにアップダウンを繰り返すサウンドを背に、星熊の歌もどんどん躍動感を増していく。さらに「初めての人も一緒に気にせず体揺らしていきましょう」という言葉とともにBeckoとコラボした「ERA」へ。これまでさまざまなフォーミュラで生み出してきたクリエイティブに、バンドの生音と星熊の声が新たな命を吹き込み、新たな物語を紡いでいく。ヘヴィさとキュートさがせめぎ合うようなこの曲の響きは、この日、この編成でしか生まれ得ないもの。そんな強烈な個性を乗りこなしながら手を振る星熊の姿に合わせて、フロアでも手が揺れるのだった。

一転、「DIVE」の壮絶なサウンドでヘッドバンギングを巻き起こすと、息を呑むような雰囲気がO-WESTを包み込む。続いては未発表の「dark」と題された楽曲。Ivanの弾くアコースティックギターと星熊のハイトーンが切なげで妖艶なムードを醸し出す。それにしても、ライブが始まったときと、ここまで6曲を歌ってきた今とで、星熊の声がまるで違う生命力を宿していることが驚きだ。もちろん楽曲ごとにさまざまなカラーを帯びているのはいうまでもないが、比喩的な言い方をすれば、曲を経るごとにどんどん血が通った「生き物」になっていくような感覚を覚えるのだ。音源もいいが、やはり彼女にはこのステージの上でしか生み出せない何かがあるのだ。そしてそれを証明するように、ここからライブの後半にかけて、ますますギアが上がっていくバンドのサウンドとともに、星熊のヴォーカルも加速し続けていったのだった。

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「dark」を終えて、バンドメンバーがいったんステージを去ると、星熊はフロアに「雰囲気に圧倒されてないですか? もっともっと自分を出してください」と語りかける。確かに圧倒はされている。一挙手一投足に、鳴らされる音に、ライブで起きるすべての瞬間に覚悟と意志がメラメラと燃えているのが観ていてわかるからだ。それは、バンドではなくトラックをバックに歌った「TOKYO 神VIRTUAL」「PAINKILLER」という2曲でもはっきりと伝わってきた。バンドを背負ってステージに立つのも覚悟だが、他に誰もいないステージにたった1人で立つというのも覚悟だ。

音が止むと、フロアから「おかえり!」「星熊!」と声が飛ぶ。それを受けて、「改めまして、星熊南巫です! ただいま! 待たせたな!」と叫ぶ星熊。そしてこの日初めて、自身の思いをしっかりと伝え始めた。「今日、こうやってみんなと一緒にまたステージに立てて、本当にがんばってよかったなと思ってます。私は我儘ラキアというグループにもともといました。去年、グループ活動に一区切りをつけて、そこから覚悟を決めて、1人で生きていくぞと思いながら、音楽をひたすら作って。じっとしてるのが無理で、ずっと海の向こう側の人とZoomを繋いで、曲を作って。ずっとそういう暮らしをしてました」。そんな日々の中で、彼女は1つのことに気づいたという。「だけど気づいたんです。怒ってくれる人がいなくなったなって。1人になっちゃったんだって寂しくなった」。でもそんな彼女を支える人がいて、最強のバンドメンバーが集まった。「スタジオで合わせたときに、ほんまにがんばってきてよかったって思えた」というメンバーを再びステージに呼び込む星熊。ステージに帰ってくるメンバーたちの手には缶ビールが握られている。「いちばんびっくりしたことが、みんなめっちゃお酒飲むの。スタジオでウィスキー一気飲みしてて、すげえなって」笑いながら、「1人じゃないって思わせてくれた、本当に大切なバンドメンバーです」と改めて紹介すると、フロアからも大きな拍手が送られたのだった。

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そして、「今日は1人で病み散らかしながら書いた曲をこの最高のチームで演奏できるのをすごく楽しみにしていました。次の曲もそんな曲です」と最新シングル「NIRVANA」へ。先ほどまでとは打って変わって、眩い光がステージとフロアを照らし出す。美しいメロディと力強いビート、繊細なギターサウンドが溶け合い、風が通り抜けるような気持ちよさを生み出していく。オーディエンスは手を揺らしながらその音に身を委ねていて、会場全体が新たな一歩を踏み出した星熊の現在地を祝福するようなムードに包まれる。そこからCVLTEとコラボレートした「tears in rain ;(」を経て、再びIvanがアコースティックギタ―を弾くリリース前のミドルチューン「Hollow Eyes」へ。スタンドマイクに向かって歌う星熊。一気に目の前の景色がひらけていくような壮大なスケールをもった楽曲だ。

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そしてライブは終盤へ。星熊は「今日は1曲、ずっと心にある曲をやりたいと思ってまして」と話し始めた。「今日はこれを1人で歌います。あの思い出や私たちの気持ち、永遠に音楽としてみんなの心に生きられるように、この曲を歌い継ぎます」――そうして歌い始めたのは、我儘ラキアの楽曲「Ambivalent」だった。オーディエンスがどよめくなか届けられたこの曲こそ、星熊が何を背負いこの場所に立っているかを物語っていた。過去もこれまで作り出してきたものもすべて引き連れて未来へと進んでいく、ソロアーティストとしての決意が、その歌に滲んでいた。そしておもむろにアッパーなロックサウンドでシーアの「Chandelier」をカバーすると、この日のライブのタイトルにもなっている「PREDICTION」(予測)という名前のついた楽曲へ。アッパーなダンスビートとともに、ライブはクライマックスの高揚を迎えたのだった。サビに突入する直前、星熊が叫んだ「Let’s go!」は、オーディエンスを鼓舞するとともに、自分自身のケツを叩くような言葉としても聞こえてきた。

「寂しい夜もありました、辛い夜もありました。ソファで動けなくて、マイクも持てなくて、歌えなくて、このまま音楽辞めてしまおうかなと思ったこともあったけど、私には使命が残っているので、いつまで経っても諦めません」。最後の曲を前にそう宣言する星熊。そして4月に横浜、大阪、名古屋をツアーで回り、その先で6月7日、Zepp Shinjukuでワンマンライブを開催することを発表した。「力を貸してください! 最高の景色を絶対見せるんで!」。彼女の叫びに大歓声でオーディエンスが応えると、ラスト「CRAVE」へ。すべてを出し切るような星熊の絶唱がO-WESTを揺らし、ライブは終わりを告げたのだった。

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本文:小川 智宏
写真:SHOTARO

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