一方、インドネシア、マタラム出身で、音楽関係のポスター、アルバム・ジャケット、マーチャンダイズなどを数多く手がけるイラストレーター、Whyperことラル・ワヒュ・ペルマナ。Whyperは日本でも、2023年1月に「Journey to the Unkown」(札幌の天神山アートスタジオ)、2025年2月に「It Is What It Is」(東京のTHE blank GALLERY)と、2度の個展を成功させている。作風こそ異なる二人だが、2025年2月に出会って、すぐに意気投合。コラボレーションの話もそこから自然と生まれていったという。ここでは初となる二人のコラボ作品を紹介するとともに、二人の対談インタビューも紹介したい。
MIRANDA YOKOTAとWhyperのコラボレーション作品

二人の出会い
SiiiCK 二人はどのようにして出会ったのですか?
MIRANDA YOKOTA インスタを見てたら、個展をやってるというのが出てきて。Whyperの絵を見た時に一気に引き込まれたんです。もう自分の好きな感じの作品しか載ってなくて。これは絶対見に行きたいと思ったんだけど、その日にはもう終わってて。仲良くなりたいと思ったんだけど、海外の人だし、会うこともないのかなと思ってたら、急にWhyperからメッセージが届いて。「僕は個展のために日本に来てるんだけど、あなたはグループ展に参加しているの? 見に行きたいんだけど」というメッセージが来て。目に見えないテレパシーが届いたのかなと思ったんですよ。しかも、明日には帰るということで。自分はたまたま空いてたから、自分のグループ展にWhyperと奥さんに来てもらって。それで会えたという感じです。
Whyper MIRANDAがインスタで僕をフォローしたので、彼女の作品を見たら、スゴくトバされたし、すぐに好きになったんだよね。作品のディテールも素晴らしくて。それで、「あなたの作品はスゴくクールです。あなたの参加してるグループ展に明日行きたいと思います」って連絡をしたら、スゴく気さくに返事をくれて。それで、グループ展に行って会った時に、アートとか食べ物とかいろんなことについて話をしたんだ。その時、彼女が最後にイラストレーションの本を僕と妻にくれたのがスゴく印象的で。僕は彼女のために何も持っていかなかったのに(笑)。そのイラストレーションの本は素晴らしくてね。絵のディテールとか色使いに改めてトバされたんだ。今も机の上にあの本を置いてるよ。
SiiiCK 実際にMIRANDAに会う前はどういう人を想像していました?
Whyper 何しろアートはスゴくぶっ飛んでたからね。クレイジーなアーティストだと思ってたよ。彼女が描くキャラクターにしても、顔からディテールから、すべてに意味が込められてるからね。彼女の作品はクレイジーだし、ダークなところもあったから、実際に彼女に会ってみたら気さくな人だったから、想像してたのとは違ってたかな。
MIRANDA YOKOTA 私はWhyperの絵の構図を見た時に、けっこう自分と近い気がしたんです。実際に会ってみての第一印象は、けっこう静かで大人しい人なのかなと思ったんですけど、どんどん話していくうちに、言葉の端々に優しさが出てて、スゴく気遣いをする人なんだなというのを感じたんです。私から絵を作る上での悩みを言ったんですけど、Whyperも同じところで困ってるという話になって。例えば、「このキャラクターは何で右を向いてるの?」とか、「何でここに脳みそがあるの?」とか質問されても、その答えが出てこないんです。感覚で描いてる部分が多すぎるので。そういうところの言語化が難しくて、作品説明をされても困るんですよ。Whyperはどうやって答えてるの?って聞いたら、Whyperも同じことを考えてたみたいで。一緒なんだ?!と思って、安心しましたね。そこから一気に、「Whyper、もうマジで大好きだわ」ってなりました。
Whyper そこは僕も同じだね。自分のアートの説明ってスゴく難しいんだ。他人に話すとなると複雑になりすぎるから。僕はアートを描く時、ただひたすら描いてることが多くて。アートを見てくれた人がそれぞれに意味を見出してくれればいいんだ。そこはMIRANDAも同じだと思うんだよね。
MIRANDA YOKOTA 同じなんですよね。安心する(笑)。
MIRANDA YOKOTA - CHEAT GPT!

MIRANDA YOKOTA - side GEEK!

MIRANDA YOKOTA - CHAT NWO EMOTION

お互いの作品について
SiiiCK そういう共通点はあるものの、二人の作風は全く異なりますよね。お互いの作品についてはどう思っていますか?
Whyper MIRANDAの作品に惹かれたのは、まずは、アクリルなどを使った伝統的な手法を使って、ディテールまで描き込んでるところなんだ。次に、作品に意味が込められてるところだ。けっこうダークなところがあるのも僕は大好きで。使われてる色はとてもカラフルなんだけど、悲観と虚無を感じるんだよね。でも、それは僕の捉え方であって、MIRANDAが意図してることはわからないけど。
MIRANDA YOKOTA 確かに、楽しいだけの絵を描きたくはないと思ってるし、カラフルに描いてるから、見てる人からすると幸せな絵には見えるだろうけど、めちゃくちゃ毒気が強いとも言われますね。ただ幸せな絵を描くというのは、自分の中ではつまらなくて。けっこうグロいのも好きだし、リアルな現実とか世の中に対して思うことを入れてる部分もあるので。
Whyper だからこそMIRANDAの作品が好きなんだと思う。僕も自分の作品を描く時に同じことを考えるから。僕の作品のメインテーマは悲観と虚無なんだ。僕の作品のキャラクターには表情がないものが多くて。感情がなかったり、笑顔がなかったり、悲しかったり、泣いてたりするんだ。作品はカラフルなんだけど、そこに描かれてるキャラクターはいつも悲しかったりする。世界は美しいんだけど、そこにいる人たちの心の中は満たされてなくて、穴が開いてたりするから、虚無感があるんだ。僕は作品を描いている時、何故かそういうことを思ってしまうんだよね。そういう僕の作品のメインテーマをみんなと共有していきたいんだ。
MIRANDA YOKOTA 私が最初にWhyperの作品を見た時に惹き込まれたのは色使いですね。色使いがとにかく上手だなと思って。中心物をより引き立てるために、背景にどの色を何を持っていくかというのが緻密なんです。背景に複数の色を使ってるのに、前面に出てるものを思いきり主人公、主役として引き立てるような色使いをできてる。そういうのは自分の中では苦手な部分だから、スゴく参考になるんですよ。構図にしても、いろんなパーツを散りばめているんだけど、全くバラバラになってなくて。全部が一つの作品としてガチッとハマってるのがスゴく好きですね。あと、Whyper一人なのに、いろんな人がいるみたいな感じがして。いろんな系統があるんですよ。国も超えてるし、日本人ではないのに何故ここまで日本が大好きな絵を描けるんだろうと思ってて。そういうところがスゴく好きですね。
Whyper ありがとう。色の使い方は僕からも聞きたいくらいだよ(笑)。僕は7歳の時からアニメを観て育ったんだ。最初に観たアニメは『るろうに剣心』で、ストーリーもキャラクターも気に入ったし、背景のデザインも色使いも大好きだ。そこから始まって、日本のカルチャーに触れるようになって。『ONE PIECE』、『NARUTO -ナルト-』といった漫画、アニメを好きになって。いろいろ影響も受けたし、日本のことも大好きになったんだ。日本のアーティストで好きなのは、山本タカト、駕籠真太郎。あと、草間彌生は色使いが大好きだ。僕のアートは日本のいろいろなアーティストから影響を受けてるから、僕のイラストレーションには自然と日本のテイストが入ってるんだと思う。
MIRANDA YOKOTA 私は漫画、アニメにはハマらなかったですね。アニメよりも、チャッキーとかバービーちゃん、映画の『スクリーム』が好きでした。日本のは『サザエさん』だけかな(笑)。
Whyper ミックス・カルチャーだね(笑)。
MIRANDA YOKOTA Whyper、FUJIROCK FESTIVALのデザインはどうやってやったの?
Whyper あれはオフィシャルではなくて、僕が個人的に作ったポスターなんだ(笑)。出演バンドが好きだから描いてみたんだ。
MIRANDA YOKOTA めちゃ公式っぽい(笑)。
Whyper これはシリーズにしたくてね。FUJIROCK FESTIVALには出演バンドが多いから、いろいろ作れると思うんだ。次はどのバンドのポスターを描こうかって考えるのが楽しいんだよね。ポスターを描いたアーティストからも褒め言葉をもらったから、うれしかったな。
MIRANDA YOKOTA 最近は日本をモチーフにした作品をいろいろインスタに上げてるよね。
Whyper 2023年1月に初めて日本に行った時に、札幌に行って人生初の雪を見たんだ。あれは夢が叶った瞬間だったね。日本は子供の頃から大好きな国だし、ありとあらゆること……食べ物、都会、人々といったものが、僕の国インドネシアとは違いすぎるし、行ってみてさらに大好きになったんだ。しかも、日本の人はみんなスゴく僕に良くしてくれてる。今年の2月に東京に行った時も、同じようにみんな僕に良くしてくれたし、MIRANDAもスゴく優しく接してくれた。日本をもっともっと知りたいと思える理由は何千個もあるよ。だから作品を描く時も自然と日本のことを考えてるんじゃないかな。
Whyper - Genesis beneath the shadow of inevitable collapse

Whyper - Lennon beneath the hue of a restless blue

Whyper - The misery that lingers between them

MIRANDA YOKOTA × Whyperのコラボレーション
SiiiCK 二人のコラボレーションについても聞きたいのですが、まずどのように始まったのですか?
MIRANDA YOKOTA 最初にWhyperに会って話をした瞬間から、Whyperといつか一緒に作品を作りたいなと思ってて。自分からは言ってなかったけど、Whyperからメールが届いたんですよ。「一緒に作品を作りたいんだけど、どう思う?」って。「めちゃ自分も作りたかったんだよね」から始まって。SiiiCKから一緒に作ったコラボの作品を出せたら、より熱が込められて、拡散できるなと思ったんです。そこも交えてWhyperに話して、今回のコラボにつながったという感じです。
Whyper MIRANDAとのコラボレーションはスゴく面白かったね。僕は今までコラボをやったことがなくて、今回が初のコラボレーションなんだ。だから最初はどうしたらいいのかわからなくて。それでスケッチを描くことから始めて、それをMIRANDAに送って。そこにMIRANDAが加えたものを受け取って、スケッチを完成させて。二人で色をつけていったんだ。現実を超越した作品になったんじゃないかな。というのも、現実には存在しない要素がたくさん入ってるから。頭がバナナになってるアシカがいたり、蝶の羽をつけたヘビがいたりするし、奇妙なものがたくさんいるんだ。二人で事前にコンセプトを話したわけじゃないけど、二人に共通してたのは自由な考え方だった。このコラボをやることで僕のマインドはオープンになったし、今後も長い間に渡ってコラボを続けていきたいと思ったんだよね。二人のベースとなる国とカルチャーは異なるんだけど、それをミックスした一つの作品をこのコラボレーションではやりたいと思ってる。これは僕のアイデアにすぎないんだけど、今回のコラボでいろいろな可能性のドアが開いたんだよね。
MIRANDA YOKOTA めっちゃわかる! 私も今後もやりたい。
Whyper ありがとう! 僕自身、今回のコラボで生まれた作品には驚いてるし、ここから先もっと冒険できると思うんだ。このコラボをこれからも育てていきたいし、シリーズにするのもいいし、Zineを作るのもいい。来年も引き続きやってみたいね。
MIRANDA YOKOTA ちょうど作品を作ってる時に、スタジオツアー東京にハリー・ポッターを見に行ったんですよ。ハリー・ポッターの劇中に出てくるグッズのデザインって、お菓子、本、チケットとか、どれも男の人と女の人が二人でデザインしてるんですよね。それを見た時に、こういうのをWhyperと作ってみたいと思いました。
Whyper 面白いアイデアだね。僕たちでもできそうだ。
MIRANDA YOKOTA あと、Whyperには謝りたいことがあって。コラボの行程でWhyperから送られてきたものの中で、かわいいクジラのフードをかぶってるキャラクターがあったんですよ。自分はアニメのキャラに全く精通してないので、そこからどうやって派生させたらいいのか、スゴく悩んで。申し訳ないけどフードの部分を変えさせてもらって、自分のターンの作品をWhyperに送ったんです。
Whyper 全然問題ないよ(笑)。結果、前よりも良くなったんだから。
SiiiCK 今後の活動予定は?
Whyper バンドのポスター、アルバムのアートワーク、マーチャンダイズを引き続きやっていく。アメリカ、ヨーロッパのバンドも手がけてるんだ。7月はインドネシアのマタラムでアートショーがある。来年はアートショーをあまりやりたくなくて。それよりもMIRANDAとのコラボを続けていきたいね。
MIRANDA YOKOTA 私は近い予定だと、心斎橋パルコで「モののケ ART CIRCUS」というグループ展に参加します。8月に六本木ヒルズのHILLS ART & ZINE MARKETにも出ます。あと、8月終わりから9月にoffshore tokyoで展示をやります。私がパッケージをデザインしたビールも発売になります。
Whyper 日本には11月にまた行く予定なんだ。奥さんがドラマーをやってるバンド、The Dareが日本ツアーで3ヶ所でライヴをやるから、一緒に行こうと思ってる。
MIRANDA YOKOTA

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