’80年代には弟のマイク・ミュアー(スイサイダル・テンデンシーズ)も加わって、ヴェニスからカルチャーを発信していくリーダー的な存在となった。スケートボードを軸に、音楽、アート、さらにはスタイルとアティテュードが加わったのが、DOGTOWNというカルチャーである。
このSiiiCKの連載では、DOGTOWNを愛する様々な人たちに登場していただき、スケートボードとカルチャーのつながりとルーツを紐解いていきたいと思う。
第6回目は、1964年東京生まれ、カリフォルニア州ハンティントン・ビーチ在住の五十嵐勉さんが登場。10代でスケートボードのライダーになり、その後トップサーファーとして全日本選手権などで活躍し、1995年からはカリフォルニアに移住。五十嵐カノア、五十嵐キアヌという二人のサーファーの父親でもある。息子たちの活動をサポートし、家族で世界中を旅して回る中、YouTubeチャンネル『CCC|カリフォルニアカルチャーチャンネル』をプロデュースするなど、カルチャーの積極的な発信を行なっている。ここでは息子のキアヌとともに帰国中、東京・原宿で行ったインタビューの後編を紹介。
Photography: Ryusei Takano
Cap (Cross logo low twill cap) ¥5,940
SHIRTS (DT wool check shirts) ¥20,350

カリフォルニア
SiiiCK ’95年に渡米してからずっと拠点はカリフォルニアですか?
五十嵐勉 ずっとだね。やっぱりスケートが好きだし、DOGTOWNがあるから(笑)。トニー・アルヴァがいるから。クリスチャン・ホソイがいるから。その側にいたいし、今は側にいるからスゴい幸せだなと思うんです。
SiiiCK ジェイ・アダムスは亡くなってしまいましたが、ジェイとの交流で印象深いことはあります?
五十嵐勉 ジェイはカノアとキアヌのことをスゴい好きで。カノアとキアヌがいると、海から上がってずーっと見てるの。スタイルがスゴい好きだったんじゃないかな。
SiiiCK それって、よっぽどのことじゃないですか。
五十嵐勉 ショーゴ・クボさんの日本のあの熱さとスタイルを感じたんじゃない? それは俺の中でも何となく重なっていて。ショーゴさんがいて、クリスチャン・ホソイがいて、だからそういう目で見てくれてたんだなって。カノアとキアヌのことが大好きだったみたい。
カノア14歳。2011年、ジェイ・アダムスが亡くなる3年前。サンクレメンテのローワーズにて。とても波の良い日だった。ジェイはサーフィンをやらずにカノアのサーフィンを真剣に観ていた

キアヌ9歳。ジェイは我が子のようにカノアとキアヌにあたたかく接してくれた

五十嵐キアヌ クリスチャンもそうで。2週間前にクリスチャンの誕生日パーティに行ったの。
五十嵐勉 うちらのことが好きみたい。ジム・ミュアーもそうで。ニッコニコしながら来るんですよ。そういうのを俺は側から見てて、「スゴいことをやられてるな」って思うんです(笑)。
SiiiCK 巡り巡ってそうなっている感じがスゴいですね。
五十嵐勉 それがちゃんと二人にも響いてるんですよ。だからこの選択をしたことは間違ってなかったなと思う。でもそういうのも、俺がずっと原宿でスケートをやってたからで。お洒落な人たちに育てられて、このカルチャーを見てきたからで。今は何かバランスが上手くマッチしてるんだよね。
SiiiCK DOGTOWNはその中でも群を抜いてカッコ良かったですからね。
五十嵐勉 トニー・アルヴァが、「Alva」のロゴを作って、ああいう売り出し方、ああいうプロモーションをしたのもスゴい勉強になったんです。だからカノア、キアヌっていう名前も、そういう感じを意識したところがあって。サインにしても、子供の頃から、「こうやって書くんだよ」って、トニー・アルヴァのサインみたいになるように言って。でもさ、それって大野薫さんにもつながるんだけどね。薫さんもそういうのをわかってたし、ああいう感じのスタイルで、べティーズ(パイナップルべティーズ)を作ったのはスゴいことだから。オーシャングライドの時から薫さんのデザインは好きだったし、水玉とか、テクノっぽい時代もあったじゃないですか。オーシャングライドの兵藤さん(兵藤正和)が好きで、薫さんも好きで。鵠沼にアパートを借りて、薫さんとはたまに話して、いろいろ見せてもらいながら、たまにダセエなと思ってたりもしたけど(笑)。
SiiiCK 先ほど、今後もいろいろやっていきたいという話もしていましたよね。
五十嵐勉 今やってることは、カノアがワールドタイトルを獲れたらいいなということに専念してる一方で、カリフォルニアのカルチャーの勉強をしていて。今、キアヌがコスタメサのグループに入り込めてるから、これからどういう育ち方をしていくのかが楽しみですね。キアヌはRVCAを立ち上げたパットさん(パット・テノーレ)にけっこう可愛がられてるんですけど、そういう人たちがちゃんと教育してくれてるところがスゴいなと思って。「ちゃんと背中を見てろよ」みたいな感じで、スゴい先輩たちがいてくれてる。クリスチャン・ホソイもカラニ・ロブもそうだけど、キアヌにべったりくっついてくれてるんです。日本のカルチャーの中の育て方と違う育て方をしてるなと思って。この前もカラニとミーティングをしたんですよ。
五十嵐キアヌ 柔術も一緒にやりました。
五十嵐勉 そういったカルチャーにちゃんと入り込んでるんですよ。でも、俺もそういったカルチャーをよくわかってるから。日本のサーフィン界で一生懸命子供を育ててるお父さんたちには、ジェイ・アダムスもトニー・アルヴァもわからない人たちが多いと思うんだけど、そこをわかってないと上手く育たないんじゃないかな。うちの子たちがどっぷりハマって、いろいろ勉強させてもらってる中、カノアはワールドランキングの5番、6番ぐらいにいるから、本物の位置にいるなって思うんです。日本人として、昔のマーク・リチャーズ、ショーン・トムソン、マイケル・ホー以上の位置にいるわけだから。それはやっぱりDOGTOWNのショーゴ・クボがいたからだなって、俺はスゴく思うんですよね。初期のDOGTOWNに日本人がいたっていうのもスゴいことだし、ペギー・オキという女性もいたんだよね。
17年前にハンティントン・ビーチにて、クリスチャン・ホソイのシグネチャーであるハンマーヘッドのスケートボードと同じシェープのサーフボードをクリスチャンに貸してもらった

見せ方、スタイル、原宿
SiiiCK ある意味、多様性の時代を先取っていますね。
五十嵐勉 でしょ? そこをわかってるような人たちじゃないと、やっぱりスタイルは作れないんじゃないかな。あと、DOGTOWNを撮ってたグレン・E・フリードマンにしても、写真のセンスが良かったもんね。
SiiiCK クレイグ・ステシックがDOGTOWNの記事を書いて、グレン・E・フリードマンが写真を撮っていましたよね。
五十嵐勉 Kryptonicsのウイールのアドバタイズにしても、今見てもスゴいでしょ。DOGTOWNのアドバタイズも、冷蔵庫の中に肉と一緒にDOGTOWNがぶら下がってて。あれもスゴいよね。今でも通用するようなアドバタイズの感じでしょ。
SiiiCK Alvaにしても、最初は広告にスケートの写真を出してなかったですよね。ニューウェイブのファッション写真みたいなのを打ち出して。
五十嵐勉 墓まで出してたよね。だって一番最初、クリスチャン・ホソイがSIMSからトニー・アルヴァのチームに移った時、そこのアドバタイズは、クリスチャンがSIMSをゴミ箱に捨てて、下にTeam Alvaって入ってるのよ。ああいう表現がスゴいなと思って。あと、SkateBoarderマガジンの最後の方に通販のコーナーがあったじゃん。サーフショップのKanoaが通販を出してて、きれいな写真を載せて、そこでDOGTOWNとかAlvaのソックスを売ってた。そういうのを見ながら、俺は太平洋スポーツとムラサキスポーツに行ってたんですよ。
SiiiCK そういう見せ方の部分も同じくらい重要だったし、カルチャーを感じましたね。
五十嵐勉 俺はムラサキスポーツの時からずっと、どちらかっていうと、裏方の方でずっと仕事してたタイプだったんですよ。日本のマーケットの良さもわかってるから、日本の企業とちゃんと話をつけるのが上手いタイプだったのかな(笑)。今、カノアがそういったところからサポートを受けてるんだけど、ちょうどタイミングも良かったよね。野茂がアメリカに行ったのも’95年でしょ。俺も’95年だし、世界に行こうっていうタイミングが良かったんだと思う。
SiiiCK 同世代のアメリカ人は、アンダーグラウンドだったサーフィンとスケートを、頑張ってオリンピックにまで持ち上げましたよね。今そこで日本人が勝つという状況はかなりスゴいことだと思いませんか。
五十嵐勉 スノーボードもそうじゃん。サーフィンではカノアがシルバーを獲ってるから。でも、やっぱりムラサキスポーツがスゴいんだろうね。あそこまで頑張ってくれたから。俺は今の会長、長谷川さんにも教わってるから、感謝してる部分もあって。長谷川さんが頑張ってあそこまで広げて、今の形を作ってくれたんです。そこにはやっぱり原宿が良かったっていうのもあると思う。それこそ暴走族の時代からそうだし。うちの兄貴と姉貴が暴走族っぽかったんですよ。表参道がホコ天になる前だよね。
SiiiCK 少し上の世代には暴走族が多くて、同じ世代だとサーファーが人気でしたよね。
五十嵐勉 『アメリカン・グラフィティ』って映画があるじゃん。あの中に黄色い車で妹を乗っけていくシーンがあるんだけど、繁華街を走っててさ、サーファーとすれ違うんだよね。あそこからサーファーが生まれて、ビーチ・ボーイズっぽくなっていくっていうシーンがあるんだけど、あれはバーバンクっていう、ハリウッドの辺りの話じゃん。その時に、「あ、こういう風な流れになるんだ」っていうのを感じた。それは当時の原宿とも、何となく重なってる部分もあったんだろうなと思って。
2010年、ハンティントン・ビーチにて。エアのスタイルをビデオを見せながら、カノアとキアヌに真剣に伝授するジェイ・アダムス

日本とカリフォルニアをつなぐ、今というタイミング
SiiiCK 今取り組んでいることとか、近いところでの予定はありますか?
五十嵐勉 今は大谷翔平が頑張ってるから、チャンスだと思うんですよ。街を歩いてても、海の中にいても、大谷がスゴいっていう話が多いし。日本人としては、「ちょっと待ってよ。スゴいだろ」みたいな感じってあるでしょ。そこを上手く利用したら、もう少しジャパンクオリティをカリフォルニアでプッシュしやすくなるんじゃないかなと思っていて。今は五十嵐っていう名前がけっこう世界に広まってきてるから、日本の良いものをもっともっと世界に、俺たちがちゃんと発信してあげて、「日本にはこんなものもあるんだぞ」っていうのを伝えたいですね。
SiiiCK いいですね。
五十嵐勉 今の日本にはたくさんいいものがあるから、それをちゃんとカリフォルニアのカルチャーにはめ込んでいくようなことができたらなと思ってますね。そこではカノアとキアヌがちゃんと発信してくれるし。だから、今回キアヌが東京に来てることも、いろいろ勉強になってると思うし。バイリンガルでしっかりコミュニケーションができて、世界のカルチャーをわかってて、日本のものをちゃんと世界に伝えていくっていうのは、次の時代のためだから。こういう子たちがこれからの日本を引っ張っていくんじゃないかと思う。そのためには、原宿もわかっていないとね。キアヌは日本が好きだしね。
五十嵐キアヌ 大好き!
SiiiCK 特に日本のどういうところが好きですか?
五十嵐キアヌ 食べ物。あと、温泉だね。
SiiiCK 勉さんはYouTubeチャンネル『CCC | カリフォルニア・カルチャー・チャンネル』もやられていますよね。DOGTOWNのジム・ミュアーを訪ねていく回も観ましたが、面白かったです。
CCC|カリフォルニアカルチャーチャンネル - CAストリートカルチャーのルーツに迫る!CCC DOGTOWN編
五十嵐勉 ジムからは「好きなのを持ってけ」って言われて、ごっそりもらってきましたね。俺はペイントを塗り直したんだけど、ジムはずっと見てたもんな。ジムたちも同期なんですよ。同じKryptonicsのウイールで滑ってた世代だから。だから、いろいろ話も盛り上がって。「あのウイングスは硬かったよな」とか、そういう幼なじみみたいな会話ができるからいいなと思って。それも日本でちゃんとスケートをやってたのが良かったなって。
SiiiCK 向こうが五十嵐ファミリーをすでに知っていたわけですから、良い関係ですね。
五十嵐勉 本当、みんながカノアとキアヌをわかってくれてるから。ショーン・ステューシーもカノアに、「板、何本欲しいんだ?」って聞いてきたんですよ。ショーンが「For Kanoa」ってどういう文字で描いてくれるんだろう、それでTシャツを作っちゃおうかなとか考えながらも、自分たちは今そういった場所にいるんだなっていうことを、味わいましたね。それを『CCC』で上手く表現できたらなと思っていて。あまり人が踏み込めないようなところにも、踏み込めるような状況になってきてるので。
SiiiCK 今日の話を聞くと、五十嵐ファミリーがいることで、国と時代を超えて、いろいろなことが一つの流れになっていくようなダイナミズムを感じました。
五十嵐勉 だから今、すべてがそういうタイミングになってきてるのかなと思ってます。

Cross logo low twill cap ¥5,940
カラー:C.Gray、Black、Navy、Beige
サイズ:ONE SIZE(56-60cm)
素材:綿100%
https://www.dogtownskateboards.co.jp/ja/products/low_twill_cap

DT WOOL CHECK SHIRTS ¥20,350
カラー:Blue、PPL、Green
サイズ:M L XL
素材:Polyester 83%、Rayon 15%、Polyurethane 2%
https://www.dogtownskateboards.co.jp/ja/products/dt-wool-check-shirts


DOGTOWN
https://www.dogtownskateboards.co.jp/ja
Instagram: @dogtownskate_jp
Facebook: @dogtown.jp
五十嵐勉
Instagram: @tom_igarashi
『CCC|カリフォルニアカルチャーチャンネル』
YouTube: @cccbycalicreator
SiiiCK Official
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