’80年代には弟のマイク・ミュアー(スイサイダル・テンデンシーズ)も加わって、ヴェニスからカルチャーを発信していくリーダー的な存在となった。スケートボードを軸に、音楽、アート、さらにはスタイルとアティテュードが加わったのが、DOGTOWNというカルチャーである。
このSiiiCKの連載では、DOGTOWNを愛する様々な人たちに登場していただき、スケートボードとカルチャーのつながりとルーツを紐解いていきたいと思う。
第12回目は、塩田大治さんが登場。
塩田大治さんは、1987年、東京・浅草生まれ。ヒップホップなどのストリート・カルチャーに影響を受けながら、料理人としてのキャリアを築いてきた。高校卒業後に浅草の老舗フレンチ「ラ・シェーブル」で修業を始め、フレンチの技術をベースに様々な現場で経験を積む。2018年には米澤文雄氏監修のNYグリル「The BURN」で熟成肉のエスプリを学び、「THE GOOD VIBES」では、店長兼料理長としてメニュー開発や店舗運営を担ってきた。
2022年に独立し、渋谷のMUSTARD HOTEL SHIBUYAにハンバーガー・ビストロ「Chillmatic」をオープン。お肉本来の美味しさを軸に、フレンチの技法とNYスタイルのエッセンスを融合させたバーガーを中心に、料理というフィールドから自身のカルチャーとスタイルを表現している。2024年12月には、店舗を渋谷の奥渋エリア、神山町へと移転。
今回、「Chillmatic Hamburger & Bistro」を訪ね、いろいろ話を聞かせていただいた。
Photography: Ryusei Takano
カルチャーと飲食の入り口
SiiiCK 音楽、ファッションなど、カルチャーを好きになった最初の入り口はどこでしたか?
塩田大治 中学生の時に、友達のお父さんでブラック・ミュージックを好きな人がいて。その家に行くとそういう音楽が流れてて、それをカセットとかMDに入れてもらって、聴き始めたのが入りかもしれないです。ガッチリみたいなので言うと、僕らは世代的にジャパニーズ・ヒップホップが盛り上がってた時期で。キングギドラが再結成して、『凶器の桜』が盛り上がって、エミネムがスゴい売れてるみたいなタイミングだったので。僕の中学からの幼馴染も、渋谷、原宿のアパレルで働いてたんですけど、それの影響でラップをやって。そいつのやってるイベントによく遊びに行ってました。
SiiiCK そこから、クラブとかにも遊びに行くようになりますよね。
塩田大治 そうですね。その頃の僕は高校を卒業して、飲食の仕事に就いてたんですけど、夜12時まで仕事をして、そこから遊びに行くというのをして。渋谷にあるクラブとかで、ホットドッグとかサンドイッチとかのフード出店もしていました。
SiiiCK フードの出店を言い訳に遊んでいたわけですね(笑)。
塩田大治 僕は父親がフランス料理をやってたんですよ。今の渋谷のブルーボトルコーヒーがあるところで、ビストロをやっていて。入学式、卒業式、家族の誕生日は、親父の店でやることが多くて。親父みたいに渋谷で店をやりたいというのが、小さい頃から何かこうやんわりとありました。
SiiiCK 飲食の道に進んだのは自然なことだったんですね。
塩田大治 高校生までちゃんと勉強してたわけでもなく、ダラダラと遊んでた感じだったので。ちゃんとした企業に勤めることはできないだろうなと思っていて。自分の中で手に職をつけて、自分にしかできないものを作り上げていきたいというのはありましたね。それでまあ親父の影響もあって、料理人という職人みたいなものにチャレンジしてみようと思って、入った感じです。
SiiiCK フレンチの修業をされていたんですよね。そこには、お父さんの影響もありますか?
塩田大治 小学校の頃、親父が休みの月曜日に、合羽橋とかに買い出しに行くのによくついて行って。並木藪蕎麦で蕎麦を食って、浅草のラ・シェーブルというフレンチに行くんです。ラ・シェーブルの人は親父の友達なんですけど、そこに寄って挨拶する時に、その人が「アイスクリームを食べるか」と言って、一口くれたりするんです。そこには何回か親父に連れていってもらったんですけど、何かスゴくシンプルの中に繊細な技術がある感じがして、無骨でカッコいいなという感覚があったんです。それで、就職の時に親父に紹介してもらって。普通だったらどこかで修行を積んだ人が働くような場所だったと思うんですけど、ズブの素人の包丁も握ったこともない僕を雇っていただいて。いろいろ指導していただいたんです。
SiiiCK ラ・シェーブルでは、シェフを10年経験されたんですよね。
塩田大治 一番初めはド・フレンチではなく、新丸ビルの萬鳥という焼き鳥屋さんに入らせてもらって。そこはパテとかテリーヌのような、フレンチのおつまみみたいなものを出すんです。その人は引き算料理というか、お皿の上にソースがかかってて、ハーブがキラキラってなってるものではなくて、付け合わせの芋があって、肉があって、ソースみたいな。余計なものが入ってない料理の人だったんです。その店では、鶏から出た筋から何から取って、出汁を取って、そこからコンソメを引いたりとか、今のフレンチでもなかなかやらないような、ド・クラシックなものを学ばせていただいて。 そこからラ・シェーブル本体に入っていくような形だったんですけど、トータルで10年ぐらい働きましたね。
SiiiCK その間も、シェフをやりながら夜遊びには行ってたわけですよね(笑)。
塩田大治 遊びに行ってました(笑)。記事にするのは恥ずかしい話ですけど。当時は、遊びでいろんな人たちと交流を持つことで、いつかそういうものが仕事になるだろうみたいな言い訳を持ちながら、夜遊びに行ってました。その時、師匠との間に兄弟子というか、ひと回りぐらい離れてる方がいて。その方にスゴく良くしていただいていたんです。僕は何も技術がない状態での飛び込みみたいな感じだったので、給料も低かったんですよね。子供もいるし、育っていくんだけど、お金はないという状態だったので、正直、転職することも考えていたんです。でもその兄弟子さんから、「給料を上げてもらう交渉をしてあげるから、バシバシ仕事を振って大変だけど、頑張れよ」って言っていただいて。一緒に夜中に残ってくれて、肉の捌き方も全部教えていただいたんです。その方は、今は横浜の青葉台でシュタットシンケンというドイツ・ソーセージのお店をやられてるんですけど、お父さんが日本人で初めてドイツのソーセージの品評会で金賞を獲った人で。その方が食肉加工の専門学校に行って覚えた技術を、僕に教えてくれたんです。

熟成肉との出会い
SiiiCK フレンチのシェフをやられていた方が、今はハンバーガー&ビストロをやられていますよね。どこかのタイミングで、肉の熟成とかハンバーガーの方に興味が向いていったのですか?
塩田大治 ハンバーガーというものに関しては、自分の好きな音楽とかファッションと同じ感覚で、アメリカン・カルチャーに影響を受けてる部分がスゴくありますね。映画とかにも出てくるので、そこへの興味はありました。Chillmaticを開業する前に、10年勤め上げたフレンチとは別のところで働くことがあって。その人も地元の先輩なんですけど、ニューヨークの三つ星のフレンチで働いていて。アメリカ料理はジャンクで身体に悪いというイメージだったのを、料理人がちゃんと作ったら安全で美味しいものもたくさんあるぞっていうのを、サンドイッチ・ショップでやっていて。その人のお店に遊びに行った時に、それまでは知らなかったパストラミというものを知ったんです。ハム、ベーコン、ソーセージ、パテとかの食肉加工をする、シャルキュトリーという職人に憧れがあったのが、パストラミに出会って、こんなに美味しいものがあるんだなというのを知って。その人に、「それを教えてください」って言って、そこで働くようになったんです。そのレストランは、炭火で肉を豪快に焼くようなお店で。炭火で焦げの香りみたいなものをつけた熟成肉が、スゴい美味しいなと思って。そこで熟成肉というものに出会えたんです。その時に、挽き肉ってスゴい面白いなと思って。例えば、牛と豚の合い挽き肉みたいなものが作れたり、硬くて食べれないようなものが柔らかくできたり、ハーブとかスパイスみたいな香りをつけられたり、塊の肉とは別の、ほぐしたり固めたりという加工ができるというのがスゴい面白くて。ソーセージとかそういう文脈から、ハンバーガーのパティとかパストラミというものにハマっていったという感じです。
SiiiCK 「Chillmatic Hamburger & Bistro」という名前を聞いた時に、「チル」も入っているし、NASのアルバム『Illmatic』も入っているなと思いました。
塩田大治 他にも候補が何個かあったんですけど、『Illmatic』が一番の名盤だとは思っているので。それをまんまつけるのも、ちょっとヒップホップ色が強すぎるなというのと、飲食店としてわかりづらい部分があるのかなと思ったので、「Chillmatic Hamburger & Bistro」にしました。 あと、「チル」っていうのが、ダラダラとしたチルではなくて、居心地良くて、雰囲気良くて、気持ち良い、そういうチルを目指してる感じで。「最高に居心地がいい」みたいな意味にしたかったんです。料理もそうですけど、店舗の雰囲気、接客、お酒、音楽、そういうのを含めて全部チルになっていけたらいいなと思って、この言葉にしました。
SiiiCK お店の人気メニューには、どういうものがありますか?
塩田大治 一番人気なのは、熟成肉のパティにパストラミを乗っけているバーガーなんですけど、塩と自家製のマスタードで食べるような、お肉をダイレクトに味わっていただくもので。僕の中でChillmaticを始めるにあたって、ハンバーガーというものをもっと分解して考えたんですよ。焼いたパティ、焼いたバンズがあって、パストラミもあるという中で、例えばトマトとかレタスとか冷たい水っぽいものが入ってしまうと、肉をダイレクトに食べてもらいたくても、野菜の水分で薄まってしまったり、温度が冷めてしまったりとかするわけです。バンズもうちはその焦げるギリギリぐらいまでしっかり焼くんですけど、野菜の水分でビチャビチャになって、食感がなくなったりもする。そういう部分を解消したいなと思ってたので、より引き算という部分で、野菜を抜いて、肉だけを挟んだバーガーを作り上げたという感じです。あとは、マンスリーでもいろいろやってますね。今月はスイカで、先月はトウモロコシで、その前は桃だったりとかするんですけど、季節ごとの旬の野菜や果物をテーマにしてハンバーガーを作っていて。そこでリピートしていただくお客さんも多かったりします。
SiiiCK スイカを入れるんですか?
塩田大治 今月のスイカは、レモンの絞り汁を調味して、ピクルスみたいな感じで漬け込んでいって。それにフェタっていう、ヤギのフレッシュチーズを散らして、バジルとミントでソースを作ってかけて。ちょっとギリシャっぽい料理のイメージなんですけど、それをパティの上に乗っけています。先月のトウモロコシは、メキシコのエローテという屋台の焼きトウモロコシみたいなものを焼いて、サワークリームみたいなものを塗って、スパイスとチーズをまぶしてかぶりつくというのを、ハンバーガーで表現しています。そこに関しては、あまりフレンチというものには縛られず、表現していきたいなと思っています。
SiiiCK お酒の方は、クラフトビールを置かれているんですよね。
塩田大治 茅ヶ崎のBarbaric WORKSというところで、オリジナルのクラフトビールを作っていただいてます。砕いたグリーンペッパーを一緒に入れているので、Cracked Pepperという名前のビールなんですけど。言われなければ気づかないかもしれないですけど、最後にちょっと胡椒みたいな香りがあって、スッキリと飲みやすいものになっています。

DOGTOWNカルチャーと通じる部分
SiiiCK イベント出店などもしていますか?
塩田大治 イベント出店は、最低でも月イチはさせてもらっていますね。友人のアパレルの周年、お店の周年、ポップアップのイベントとかが多いです。クラフトビールの周年とか、飲食店のコラボもさせてもらっています。レセプション・パーティとかエキシビションのケータリングで入らせていただくことも多いですね。この前のDOGTOWNのイベント(7月31日にJOLLYS LIQUOR STOREで行われた「Road of DOGTOWN」)にも、ハンバーガーで出店させていただいて。スゴく楽しいイベントになりましたね。いろんなものがクロスオーバーしてくるような感じで。ああいうことは店舗ではできないので、今後も食という部分でご一緒できればいいなとは思っています。
DOGTOWNのイベント「Road of DOGTOWN」に出店

SiiiCK DOGTOWNのカルチャーについては、どういうところが好きですか?
塩田大治 DOGTOWNは、やっぱり映画(『ドッグタウン&Z-BOYS』)の印象がスゴい強いですけど、僕らChillmaticのメンバーも友達同士から始まっていて。同い年の友達が元々バーをやってて、そこに遊びに行って、いつか一緒にやれたらいいよねみたいな話をしてたんですよ。初めは口約束みたいな感じで、実現できそうな感じでもなかったですけど、今では一緒にやっていたりします。DOGTOWNと似てる部分でいうと、自分たちで作り上げていくところかなと思っていて。飲食とストリート・カルチャーはまだそんなに交わる部分が大きくはないのですが、それが大きな一つのカルチャーになればいいなとずっと思っていて。うちはそういう意味でいうと、スゴいミックスなんですよ。ヒップホップが好きなヤツもいれば、レゲエが好きなヤツもいるし、スケーターもいれば、DJもいる。そういうのがごちゃごちゃっとした、楽しい場所を作り上げていくというのが、僕らの目標みたいなところでもあって。そういうのは、ちょっとDOGTOWNと通じる部分はあるなと勝手に思っていますね。
SiiiCK そこには、自分たちの飲食カルチャーを作りたいという気持ちもあるわけですよね。
塩田大治 そうですね。ハンバーガーのビストロとは言ってるんですけど、ビストロだからワインじゃないといけないこともないと思うし、そもそもアメリカ料理とフレンチのフュージョンみたいなところもあるので。美味しくて楽しければという感じではありますけど、そこが縛られる部分ではなくて、もっと自由なものでありたいなというところはあります。
SiiiCK 今後考えていることがあれば、お聞かせください。
塩田大治 今、ハンバーガー&ビストロとして、Chillmaticをやってる中で、ビストロという部分がそんなに拾えてないと思っていて。一番初めに、MUSTARD HOTEL SHIBUYAの中に開業した時は、オールデイダイニングみたいに、朝食からバー営業までやってたんですよ。ランチでハンバーガーを出して、夜はちょっとビストロつまみもあるような感じで、ハンバーガーも提供して、最後はバー営業みたいな感じだったんです。ここでも、そういうビストロ営業をやっていきたいなと思っていて。Chillmatic Hamburger & Bistroというものを、夜のお酒を含めた溜まり場みたいなところにしたいんですよ。あと、イベント出店に関しては、国内は大阪、名古屋、金沢、福岡、岡山、淡路島とか、いろんなところに行かせてもらってるんですけど、国内だけじゃなく、海外に出店とかお仕事で行けるようになりたくて。この間も久しぶりにフランスに行ったんですけど、スゴい楽しかったんですよね。知り合いのお店を手伝わせていただくことはあったんですけど、ちゃんと自分のお仕事としてやったことはないので、そこにちょっとチャレンジしてみたいなと思っていて。いろんな海外に行って、自分の料理を食べてもらいたいなというのが目標としてはあります。

チェッカーPT SSシャツ ¥15,950
カラー:ブルー
サイズ:M L XL
素材:レーヨン85%、ポリエステル15%
https://www.dogtownskateboards.co.jp/products/dogtown-checker-pt-ss-shirt


DOGTOWN
https://www.dogtownskateboards.co.jp/ja
Instagram: @dogtownskate_jp
Facebook: @dogtown.jp
Chillmatic Hamburger & Bistro
東京都渋谷区神山町11-10 梅澤ビル 1F
営業時間:11:30 - 22:00(L.O. 21:00)
Instagram: @chillmatic_tokyo
SiiiCK Official
0件